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英語の得意な夫と英語の苦手な妻が作った英会話入門
妻が英語を習いたいと言った。 独身のころラジオの英語番組を聞いたり、英会話教室にも通ったが、長く続かなかったと言う。 「初級クラスでも、よく話せる人が多い。私が一番ダメだった」 妻はきまり悪そうに言った。 英語は苦手だ、でも習いたいと言う。 妻が使えそうな教材はないか二人でさがしたが、これというものがなかった。 妻が必要なのは、英語の基礎からやさしく教えてくれるものだが、教材の多くは学ぶ人がすでに英語をよく知っていると想定していた。 ラジオやテレビの英語番組を聞いてみたが、意外と難しかった。 「本当に初心者向きの英会話教材はないね」 私の仕事は出張が多い。出張先ではひまな時間がある。ワープロを持ち歩き、六ヶ月かけて英会話入門の原稿を書き上げた。それを妻に渡した。 妻は目を輝かせた。 「すごい」 翌日、 「どうだい。君の正直な意見が聞きたいんだ」 「私の正直な意見でいいね」 「ああ」 「むずかしすぎる」 わかりやすく書きなおした。 「どうだい」 「怒らない?」 「ああ、怒らないよ」 「むずかしくないけど、たいくつ」 原稿は本棚にしまった。 一レッスンずつ新たに作り、妻に英語を教えた。 妻が楽しく学べる日もあれば、喜ばない日もあった。 「そうなの、こんなことを習いたかった」 「こんな長い文章は覚えられない」 妻は初心者が何を学びたいか、初心者にとって何が難しすぎるか知っている。私には英語の知識がある。 「二人で初心者むきの英会話入門を作ろうか」 「うれしい。いいよ」 私が書き、二人で読み、書きなおし、ひとつずつレッスンを作り上げていった。 「ABCや曜日の発音も練習したい」 「店の人に声をかけるときはなんて言うの」 「この話は面白くない。省こうよ」 「ひとつの文章に知らない単語がふたつも入っている。書き替えて」 一年半をかけてCD十五巻を作った。英語を習う人と教える人がいっしょに作ったので、本当にやさしい英会話入門ができた。
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